乳癌・乳ガン・症状・検査・療法

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 乳癌(乳ガン・乳がん)・原因・症状・検査・療法・発生部位・自己検診・転移・再発・類似疾患



     
§1 乳癌(乳ガン・乳がん)とは


     乳癌は近年では、治療の進歩により、5年生存率は全患者数の80%と高率の生存率の癌となりましたが、

     一方で、この乳癌は全身に転移し易い性質を持っています。離れた臓器に転移しますと生存率は大きく低下

     します。しかも乳癌は早い段階で周囲のリンパ節、腋下リンパ節に転移します。


     女性の癌の中で最も癌にかかる率として高いのは乳癌です。毎年4万人もの女性が乳癌に罹患し死亡者数

     も増加しています。乳房には乳腺と呼ばれる組織が有りますがこの乳腺に出来るのが悪性腫瘍/乳癌です。

     乳癌の場合は他臓器からの転移はないので、乳房にしこりなどの異常を見つければ、乳癌を疑う事になり

     ます。但し、乳癌から多臓器等への転移はあります。(臓器への転移では肺、胸膜がし易く、骨、肝臓、脳など

     にも転移します。乳癌は早期より血行性転移の起こり易い癌で腋下リンパ節に転移が無くても臓器転移がない

     という事は言い切れません。又、センチネルリンパ節生検は急速に普及しつつあるのが現状です。)

     アメリカ人の乳癌罹患率は日本人の3〜4倍といわれておりますが、日本人の乳癌罹患率は急速に増加して

     おります。

     乳癌が疑われる場合は外科診療ですが、外科の中に乳腺外科、乳腺外来などがあるのなら乳癌専門の診療

     をしていると考えましょう。

     乳癌の手術後の再発・転移は5年以内が要注意の期間で、多いのは2〜3年以内の再発です。この再発・転移

     は術後の早い段階の方が治療も難しくなります。再発は局所と遠隔転移があります。又、乳癌は比較的早い

     段階で、周囲のリンパ節や腋の下にリンパ節に転移を始めます。その後、血流に乗って肺や肝臓、脳、骨など

     に転移します。近年の抗癌剤などの研究・開発・治療などにより、再発率も低下していますが、5年以上の

     経過で再発する事例もあります。乳房や胸壁に再発した局所再発癌であれば、手術と化学療法で、完治もしく

     は長期の延命も期待できます。肺や脳、肝臓、骨などの転移・再発では化学療法が中心の治療になります。


     乳癌のマンモグラフィー検査の重要性は、多くの女性が自覚されておりますが、実際に検査を受けている方は、

     近年の資料では2割程度と、非常に低率である事が、あるNPO法人の調査で発表されております。



     
* 乳癌を取り巻く環境;日本人女性の乳癌罹患率のピークは40歳大、死亡率のピークは50歳代です。過去の

     検査で異型細胞などの前癌病変の診断歴のある人は乳癌になる危険性が高いといえます。女性ホルモンの刺

     激が乳癌の癌化を促し、 増殖させるという事をお知らせさせて頂いております。 (即ち、12歳以前の初潮の方や

     55歳移行の閉経の方に乳癌罹患リスクが高いという事にもなります。) この事はコントロールできませんが、リ

     スクを回避する事も可能な事柄もあります。(乳癌の発生リスクもご参考にご覧下さい)又、乳癌は乳腺がしっか

     り残るとどうしても罹患しやすくなります。母乳をあげない事は、経年後も乳腺がしっかり残っている事になります。

     更に、近年の食生活、 ライフスタイルの欧米化に伴い、 1995年を境に乳癌が日本人女性のトップになっている

     との指摘もあります。一方で米国や英国などでは乳癌による死亡率は減少傾向にあり、その一番の要因は、マン

     モグラフィー検診の結果とされております。 極初期の乳癌の10年生存率は95%にも昇ります。乳癌を早期発見

     するコツは間隔をあけずに検診する事です。 自治体の検診では、速く大きくなる乳癌には対応が出来ません。ご

     自分で最低、1回/月乳房の自己触診をする事が大切です。 それを続けますと、普段とは異なる乳房の変化に気

     付く事が出来ます。



     
* 乳癌の周術期リハビリ;リンパ浮腫(リンパ液が溜まるためにおきるむくみ)の予防と、肩関節が固まってしまう事

     を予防します。リンパ浮腫の予防は日常生活の活動の中でむくみを起こし易いものと、起こし難いものが有る事を

     指導の中で知る必要があります。また、乳癌の術後は肩関節の動きが悪くなりがちです。原因に応じた対策を、術

     前の状態と術後の状態を捉えて、とります。 例えば、術前の腕の太さを測っておいたりする事で、その変化を捉え

     たりします。わずかな変化がむくみの診断の助けになります。又、肩の動く範囲を測っておく事などで、術後どこま

     で回復するか、目標設定も容易になります。








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§2 乳癌(乳ガン・乳がん)の発生要因


     欧米人の乳癌死亡率は日本人の1.5倍〜3倍といわれますが、実はタイでは日本人の1/10にすぎませ

     ん。しかも日本人は乳癌の死亡率も右肩上がりの上昇率を示しています。これは環境や生活など様々な要

     因が考えられますが、一口に言えば生活の欧米化が影響しているのではないかと考えられております。そ

     の好発年齢は40歳代といわれますが高学歴、出産未経験、高齢出産の人がそうでない人に比較して多発

     傾向にあることも統計的に分かっております。以上のように
生活、特に食生活の欧米化(動物性脂肪摂取

     量の増加など)や、未婚、小産、高齢出産(初産が35歳以降)初潮年齢が低い(10歳以下)、月経周

     期が短い、閉経が遅い(55歳以降)、体型が大型で肥満傾向(脂肪組織とアロマターゼ、BMI25以上は肥

     満)、乳癌既往歴がある、良性乳腺疾患既往歴がある、更には血縁関係者に乳癌患者がいるなどの遺伝的

     要因(第一近親者を含めて3人以上乳癌患者がいるor第一近親者に発端者を含めて2人以上の乳癌患者が

     おり、1人が40歳未満・両側性乳癌・他臓器癌合併患者・男性乳癌患者のいずれかに該当するなど)、

     子宮体癌、卵巣癌既往歴がある、なども危険因子です。エストロゲン(女性ホルモン)の影響が考えられ

     ております。
因果関係は証明されておりませんが海外生活が長い場合も乳癌発症率が高いという疫学調査

     もあります。(乳癌の発生リスクも御参考にご覧下さい)




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§3 乳癌(乳ガン・乳がん)の症状


     乳癌の主な症状は乳房に硬いしこりがあること、乳頭から血性分泌液が出る事、乳頭部に糜爛がある事

     、乳房の皮膚に引きつれがある事、腋窩リンパ節に腫れを感じる事、遠隔転移による腰痛などの症状な

     どがあります。



     
 §3−1 しこり症状/乳癌(乳ガン・乳がん)


      最も多い症状としてしこりがあげられます。乳房の硬いしこりは右側より左側の乳房に多く、又、両乳房とも

      外側上方で約半数と多数が発見されます。乳頭を境にして上下に分けますと上半分が8割方発見されます。

      ところで、授乳期の乳腺細胞は癌細胞と誤認されるほど、活発に乳汁分泌を行っており、妊娠していない時に

      は見られない分泌細胞(腺房細胞)が出現します。妊娠・授乳期に一部の乳腺細胞だけが特に活発に分泌を行う

      ためにしこりとして触れる事は生理的な現象でもあるため、診断を依頼する場合には、授乳中である事を明確に

      医師に知らせる事が大切です。ただ、ホルモン活性の高い妊娠・授乳中の乳癌は一般にとてもタチの悪いもの

      です。


妊娠に合併した乳癌は特にタチが悪く、手術

などの手配も一刻を争うくらいの状況になり

ます。しかし、皮膚の汗腺由来の良性腫瘍で

あったケースもある。汗腺の導管由来の良性

腫瘍は一見すると浸潤性乳癌と紛らわしい顕

微鏡所見をとるとされる。このケースでは乳

腺腫瘍にしては、浅い位置の病変であったと

され、この事が先に分かっていれば、誤診は

無かったであろう、とされています。臨床医

と病理医のコミュニケーションは極めて大切

です。





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§3−2 乳首から出血症状/乳癌(乳ガン・乳がん)


      癌組織は脆く崩れ易いため出血し易くなります。乳首の血液は乳癌を疑います。





      
§3−3 その他の症状/乳癌(乳ガン・乳がん)


      皮膚の引きつれ、乳首からの異常分泌、乳頭部の湿疹、ただれなどを注意します。





      
§4 乳癌(乳ガン・乳がん)に類似する症状の疾患



      
§4−1 乳腺炎


      乳汁鬱滞、細菌感染で起こり、腫れ、発赤、痛み、発熱などが伴い比較的乳癌とは区別し易いが、乳癌

      の中には皮膚の発赤を伴う炎症性乳癌もあり注意を要する。






      
§4−2 線維腺腫


      良性腫瘍で10代後半から20代によく確認されます。しこりの境界は明瞭ですが多少ぶつぶつ感があ

      ることが多く、痛みは通常確認されない。乳癌との区別がし難く専門家にすぐ受診して判断を仰ぐ。乳

      腺症と判断された場合は将来的に癌化する事もありうるので引き続き専門医による経過観察が必要にな

      ります。検査はx線、超音波検査、細胞診、生検などで確認されます。






      
§4−3 乳腺症


      乳腺組織がホルモンの関係で腫れたり、しこりが出来たりし、30歳〜40歳代に多い特徴があり、月

      経前に症状が強くなる。その際にはしこりが痛む傾向にあり乳癌との区別が問題となる状態になります。

      乳腺症と乳癌は異なりますが中には異形成細胞を伴うものがあり乳癌リスクが高くなると考えられてお

      りますので注意が必要です。3〜6ヶ月の定期検査による経過観察が求められます。




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§5 乳癌(乳ガン・乳がん)の検査/検査機器等


     マンモグラフィー超音波検査マンモトーム生検穿刺吸引細胞診乳頭分泌物細胞診乳管造影検査

     、乳管内視鏡検査などがあります。その他ヘリカルCT検査ガドリニウム造影MRI検査腫瘍マーカー

     (CEACA15-3NCC-ST-439BCA225など)、骨シンチグラフィーPETなどがあります。乳癌の

     検査の概要に付きましては下記をご覧下さい。






     
§6 乳癌(乳ガン・乳がん)の療法


      
§6−1 乳癌(乳ガン・乳がん)の外科療法


      「ハルステッド手術・乳房温存療法」、「乳房部分切除術、乳房部分切除+放射線療法、乳房切除術」

      など無作為の条件下での臨床試験結果の検証は長年の間研究、検討されてきました。その結果生存率に

      大きな差を認めないという結果が得られている事もあり、T期、U期の治療では乳房温存療法が優先の

      選択肢になってきております。ただ、複数の臨床試験で乳房全体を切除する場合と部分切除では生存率

      に差はないものの、乳房を部分切除した場合では乳房の局所再発率は部分切除の方が高いという結果が

      報告されている場合もあります。


      ある事例では、50歳代の女性で、浸潤性乳癌が患者さんの強い希望で縮小手術になった様です。しかし、

      このケースの腫瘍は中央のしこりの部分のみならず、周辺部にも広く浸潤しており、迅速診断に提出された、

      断端部は陽性で、リンパ節転移も確認された。このケースが縮小手術となると、手術中に癌組織を切り刻んで

      いるのに等しく、かえって癌細胞を体中に撒き散らしてしまう可能性があるとされる事例です。縮小手術は

      出来るものと、出来ないものがあります。





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胸筋合併乳房切除術(ハルステッド)
(現在殆ど採用されておりません。)
胸筋温存乳房切除術(オーチンクロス
or(オッケンクロス)

乳房扇状部分切除術 乳房円状部分切除術

腫瘤摘出術
乳房扇状部分切除術は基本的に乳頭を中心にして正常乳腺組織を扇型に切除します。乳癌は乳管を扇状に広がるためこの様な切除法をとります。乳房の変形が大きくなりますが、乳癌の取り残しの可能性は低くなります。必要に応じて腋下リンパ節を郭清します。

乳房円状部分切除術は腫瘍を中心にして正常乳腺組織を安全を見た幅で切除する方法です。切除範囲が少ないために乳房の変形は少なくて済みますが乳癌の取り残しのリスクはやや高くなります。必要ならば腋下リンパ節も郭清します。

腫瘤摘出術は乳腺を殆ど切除しない考え方です。しこりのみを取り除いて必要に応じて腋下リンパ節も郭清します。
* 近年の傾向では、胸筋温存乳房切除術と乳房温存手術(乳房部分切除術)で、手術は殆どを占めて

おります。乳房温存療法ではその手術の適応の条件としまして、腫瘤の大きさが3cm以下であり、(良

好な整容性が保たれる様で有れば4pまで)、各種の画像診断(超音波、マンモグラフィ、MRI、CT

など)で、広範な乳管内進展を示す所見のないもの、多発病巣の無いもの(2個の病巣が近傍に存在する

場合は含めても良い)、放射線が可能なもの(重篤な膠原病の合併症がなく、同側胸部の放射線既往では

無く、患者さんが、照射を希望する場合)、患者さんが乳房温存療法を希望する事などの条件が満たされ

れば、手術適応があるとされます。



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§6−2 乳癌(乳ガン・乳がん)の放射線療法


      乳癌細胞は正常細胞より放射線の作用を受け易いのでできるだけ正常細胞を傷つけない線量で乳癌細胞

      を攻撃します。放射線維の適切な治療により放射線療法は化学療法より副作用が少ないといわれており

      ます。放射線療法は扁平上皮癌によく効果を発揮し、腺癌には効き難いとされます。乳癌の放射線療法

      は乳房温存手術後(通常5日/週合計5〜6週実施)、乳房切除術後、手術不可能な進行乳癌の術前治療

      、再発、転移などの防止を目的として施療されます。放射線療法は欧米では積極的に実施されておりそ

      の臨床試験結果でも乳房温存手術の場合での局所再発率は、照射なしのグループに比し、大幅に(35

      %→10%)改善しております。「乳房温存ガイドライン」でも「乳房温存手術後の全乳房照射は現時

      点では必須の治療法と考えるべき」と提言しております。放射線療法は局所療法としても有効とされま

      すが副作用もあります。急性障害と晩期障害がありますが急性障害の場合は皮膚が日焼けしたように赤

      くなり、それが黒くなって皮もむけてきます。皮膚が乾燥に痒くなったり、水ぶくれになる事もありま

      す。一方晩期障害では数ヶ月〜数年後、皮膚の萎縮、毛細血管の拡張、皮膚組織や乳腺の硬化、乳腺の

      萎縮などがおこります。晩期障害の場合は治り難い事が知られておりますが、照射が適切であれば重症

      晩期障害が発現する事はまれであるとされております。放射線療法は痛みは殆どなく、皮膚の温度はわ

      ずかに(1/2000度)上がる程度で、一回の照射時間も1〜2分程度です。




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§6−3 乳癌(乳ガン・乳がん)の化学療法


      抗癌剤は注射薬と経口剤が有りますが投与は一定の間隔で1クール(1サイクル)を通常4〜6週間程

      度の間隔で実施されます。副作用は個人差もあり種類によっても異なりますが主には骨髄の機能が抑制

      されるために起きる白血球減少が多く、赤血球減少などそれに伴う症状がおきてきます。例えば白血球

      減少では感染症、発熱、風邪、虫歯、食中毒などが起こり易くなります。2週間程度経過すれば回復し

      て来ます。好中球の数値がそのバロメーターとなります。赤血球では鉄欠乏性貧血、だるさ、疲れ易さ

      、めまい、息切れなどが起こりやすく、血小板が減少すれば出血傾向になります。体温や咽頭炎、膀胱

      炎などの感染症にも注意が必要です。乳癌の化学療法では多剤併用療法も採用される事があります。例

      えばCMF療法CAF療法などが術後化学療法として行われておりますが、副作用が強いのでエスト

      ロゲン受容体、プロゲステロン受容体陰性例、リンパ節転移例、若年発症例など比較的ハイリスクの症

      例で適応されます。




      
抗癌剤            副作用
ドキソルビシン(アンスラサイクリン系) 白血球減少、吐き気、嘔吐、心筋障害、脱毛など
エピルビシン(アンスラサイクリン系) やや軽度の白血球減少、吐き気、嘔吐、心筋障害、脱毛など
ドセタキセル(タキサン系) 白血球減少、痺れ、脱毛など
パクリタキセル(タキサン系) 白血球減少、痺れ、脱毛など、まれにショック
シクロフォスファマイド 白血球減少、出血性膀胱炎など
メトトレキサート 肝障害、腎障害、口内炎など
フルオロウラシル5-FU 軽い消化器症状、皮膚の色素沈着、嗅覚障害など





      近年再発・転移性乳癌に対し従来にない分子標的治療薬も登場しておりますが、これは病気の原因になる分子

      だけに作用する薬剤です。癌細胞にあるHER2という増殖に必要な情報を外部から細胞内に取り込む働きをする

      受容体に作用する薬剤で、このトラスツズマブはHER2受容体と結合して情報を取り込めなくします。トラスツ

      ズマブが効くか否かはHER2受容体が過剰に発現しているかどうかで判断します。HER2受容体陽性の人はホルモ

      ン受容体陰性の人に多いのでホルモン受容体陰性であるのか否かは重要です。HER2受容体陽性の人は乳癌全体

      の15〜25%存在すると考えられております。ウィークリー・タキソールとの併用がより効果的と考えられ

      ており単独・併用療法どちらも推奨されております。トラスツズマブの副作用は発熱・悪寒が初回投与の40

      %、2回目以降は5%程度になります。心不全も起こる事があり、5%の人には軽い運動でも息が切れるなど

      の症状がでますので心臓に問題のある人はアンスラサイクリン(心臓に副作用)の併用は出来ません。



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§6−4 乳癌(乳ガン・乳がん)のホルモン療法


      ホルモン療法は作用が比較的穏やかで長期間使い続ける事により効果を発揮し、タモキシフェン(抗エ

      ストロゲン剤)の場合は5年が最も有効とされております。ホルモン療法剤には抗エストロゲン製剤(

      エストロゲンとエストロゲン受容体の結合をブロックし乳癌細胞を抑制)、LH-Rha製剤(卵巣機能を抑

      制し、エストロゲン分泌低下により乳癌細胞を抑制)、アロマターゼ阻害剤(卵巣機能の失った閉経後

      の方に適用)、プロゲステロン製剤(何故乳癌に効果があるのか不明)があります。


      スイスのザンクトガレンでの国際会議合意事項としての推奨治療はホルモン感受性のある閉経前の中間

      リスク群に対し「タモキシフェン(抗エストロゲン剤)±LH-RHa」「化学療法→タモキシフェン±LH-RHa」と

      なっております。「±」とは必要に応じ追加の意です。「」内の左側の投与後の経過から必要に応じて

      右側のものを追加するわけです。タモキシフェンは乳癌術後療法として最もよく使用されている抗エス

      トロゲン製剤(エストロゲンと癌細胞にあるエストロゲン受容体との結合を阻害することで癌細胞の増

      殖を抑制する)です。


      エストロゲンの分泌を抑える事により乳癌を抑える考え方で、エストロゲンは脳の視床下部から.刺

      激ホルモン放出ホルモン(ゴナドトロピン放出ホルモン)が分泌され、その刺激により下垂体から.

      刺激ホルモンが分泌されますが、その刺激によりエストロゲンが卵巣より分泌されます。LH-RHa(アゴ

      ニスト製剤)は脳下垂体からのゴナドトロピンの分泌を阻害してエストロゲンの分泌を抑えます。乳癌

      の60〜70%程度がエストロゲンの影響を受けて増殖すると考えられておりますのでエストロゲンの

      作用を阻害したり、分泌を抑えることが乳癌増殖を抑えることに繋がる考え方です。LH-RHaは注射薬で

      閉経前の人に効果があり皮下注射を1回/4週・1回/12週のタイプがあります。通常2年間の療法中

      は生理は止まりますが、投与を中止すると卵巣機能の回復と共に月経も戻ります。


      閉経後の方の場合は卵巣からのエストロゲンは分泌されなくても、脂肪組織のアロマターゼという酵素

      の作用を受けたアンドロゲン(副腎からの分泌による)がエストロゲンに変換されるため、これをブロ

      ックするためのアロマターゼ阻害薬を投与します。閉経後の方に効果があります。


      近年の報告ではアロマターゼ阻害剤とタモキシフェン製剤の5年間投与でアナストロゾール(アロマタ

      ーゼ阻害剤/DNA合成抑制、下垂体・副腎・.系への抑制作用、抗エストロゲン作用などにより乳癌細

      胞を抑制する)を5年間投与するほうが再発を防ぐというものもあります。


      更に、タモキシフェンを5年間投与後、レトロゾール(アロマターゼ阻害剤/副作用として吐き気、無月

      経)を5年間追加投与するとタモキシフェンを5年間だけのケースより再発を防ぐ効果があるという報

      告もあります。


      もう一つの選択肢としてタモキシフェンを2〜3年投与後にエキセメスタンへの切り替えをして合計で

      5年間の投与でタモキシフェン5年間単独投与より高い効果を認めたという報告もあり、ホルモン療法

      の選択肢は増加傾向にあります。






      
§6−5 乳癌(乳ガン・乳がん)の温存療法


      
乳房を切らない乳房温存療法が普及しておりますが、この場合は放射線療法を併用するのが基本になっ

      ております。



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§6−6 センチネルリンパ節生検/乳癌(乳ガン・乳がん)


      センチネルリンパ節は乳癌細胞が最初に通過するリンパ節でこのセンチネルリンパ節生検という新療法は従来の

      乳癌手術のQOLを損なう最大の理由であるリンパ節郭清術が、乳癌研究が進展するにつれリンパ節郭清のタイミ

      ングに問題がある事が判明してきたために登場して来た考え方です。即ち、乳癌は浸潤癌になった段階で既に癌

      細胞がリンパ節を経由せずに血中に出て全身に広まっていると考えられるようになりました。
          -センチネルリンパ節模式図-
この段階でのリンパ節郭清による乳癌転移は

完全には防げない事が分かってきました。更

に統計的に検証しますと、リンパ節を郭清し

ても遠隔転移の率や生存率に差が無いという

事も分かって来ました。乳がんのリンパ節転

移は一定の道筋があり、この乳癌細胞が最初

に流れ着くリンパ節が1〜2個である事が分

かってきました。つまり、センチネルリンパ

節に転移が無ければ他のリンパ節に転移が無

いという考え方です。これは当該リンパ節に

転移が無ければ他のリンパ節郭清の必要が無

いことになります。sentinelとは見張り、前

哨の意味です。センチネルリンパ節はラジオ

アイソトープと青い色素を使い癌の近くに注

入します。

その上でガンマプローブという放射性物質に反応するセンサーのような器具を皮膚の上に当ててアイソトープの

追跡をし、ガンマプローブの反応した箇所がセンチネルリンパ節です。ここを切除して即時、癌細胞の有無を

確認します。乳癌細胞が無ければ、転移が無いと判断します。但しこの方法は確実ではまだ無く、センチネル

リンパ節の見つからないケース、センチネルリンパ節に転移が無いのに腋下リンパ節に転移の見つかるケース

もありますし、手術時の病理検査で結果が覆される事もあります。現在大規模な臨床段階ですが、この技術は

更に進展して行くものと考えられております。センチネルリンパ節生検では、2〜3個のリンパ節を採取して

転移の有無を調べますが、ある調査では、生検だけでリンパ節郭清をしなかった106人のうち、35人に

浮腫が確認されました。この浮腫はリンパ節郭清のグループでは60%に確認されておりますので、それよりは

少ないのですが、海外の文献では通常5%程度とされていますので、この原因として、センチネルリンパ節を

探す過程で、周辺のリンパ節を傷付けているのではないかと、推測されております。郭清しても浮腫はある

程度、予防できるとされ、浮腫に対する予防、治療に関する分野の教育や配慮などもなされなければならない。






     
§7 TNM分類/乳癌(乳ガン・乳がん)


T 原発巣 大きさ 胸壁固定 皮膚の浮腫、潰瘍、衛星皮膚結節
 Tx 評価不能
 Tis 非浸潤癌あるいは腫瘤を認めないパジェット病
 T0 原発巣を認めず
 T1 ≦2、0 
 T2 2、0< ≦5、0
 T3 5、0<
 T4a 大きさを問わず
 T4b
 T4c
 T4d 炎症性乳癌
N 所属リンパ節 同側腋下リンパ節 胸骨傍リンパ節
可動 固定(周囲組織又はリンパ節相互間)
Nx 評価不能
N0
N1
N2
N3 +or− +or−
M  遠隔転移(鎖骨上リンパ節を含む)
鎖骨上リンパ節 その他の遠隔転移
Mx 評価不能
M0
M1a
M1b +or−
                                                             by 日本乳癌学会



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§8 TNM分類による病期/乳癌(乳ガン・乳がん)


T0 T1 T2 T3 T4
M0 N0 - 病期T 病期UA 病期UB 病期VB
N1 病期UA 病期UA 病期UB 病期VA 病期VB
N2 病期VA 病期VA 病期VA 病期VA 病期VB
N3 病期VB 病期VB 病期VB 病期VB 病期VB
M1 病期W 病期W 病期W 病期W 病期W
病期0 Tis非浸潤癌                             日本修正案









     
§9 乳癌(乳ガン・乳がん)のステージ




 -乳癌のステージ-

stage 癌の種類 しこり リンパ節転移
0期 非浸潤癌 不感 なし
T 浸潤癌 2p以下 なし
U 浸潤癌 なしor2p以下 疑い
2.1〜5p なし
2.1〜5p 疑い
5.1p以上 なし
V 浸潤癌(進行性) 5p以下 腋下リンパ節転移多いor胸骨傍リンパ節転移あると思われる
5.1p以上 液化リンパ節転移あるor疑い
しこりの大きさを問わずしこりが胸壁に固定or皮膚上に現れ、皮膚の浮腫ただれを生じている 腋下リンパ節転移の有無を問わない
しこりの大きさを問わない 鎖骨リンパ節に転移
しこりの大きさを問わない 腋下リンパ節と胸骨傍リンパ節両方転移
W 浸潤癌(進行性) しこりの大きさを問わない 他臓器、遠隔転移

by  日本乳癌学会





§10 乳癌(乳ガン・乳がん)の発生部位


 右図をご覧下さい

 乳癌は右胸より左胸が、又、内側より外側、下部より上部が

 多く発生します。乳癌のしこりの大きさは自己検診を時々して

 いる方は1円玉サイズで、たまたま発見された場合などは

 500円玉サイズくらいで発見されるといいます。一月に一回

 の場合なら直径1p程度でも発見出来るようです。自己検診

 なら頻繁に気軽に出来ますので是非実践しましょう。


 下図をご覧頂きながら御理解下さい。

 検査で使う指は人差し指、中指、薬指、(小指)です。指先の腹の部分から先側を使い、力の入れ具合を加減しながら自己

 検診のTを実践してゆきます。石鹸を身体につけてから、なで方はどの方法でもよく乳首からかなり離れた部分もよく調べ

 ます。内側から外側、外側から内側などよく調べてください。慣れてくれば自分の通常のコンディションが分かるようになり

 ます。特に上図の発生部位のように上半分、内側より外側の方が発生頻度が高い事も有りますので念入りに調べて下さい。

 しこりがあれば肉マンの中に入れた梅干の種の様な感覚を捕らえるようになります。自己検診のUでは鏡の前で手を上げ

 下げしたり身体の方向、角度などを変えたり両手を腰に当てたりして、乳房の大きさ、形、膨らみ、窪み、えくぼ、引きつれ、

 乳首へこみ、ただれなどを目視確認したり、乳房を手で支えたりして確かめます。乳頭分泌液検査では乳房の周囲から乳首

 に向けて乳汁を絞る要領でつまみながら、分泌液や血液などの有無の確認をします。血液が混じるようならすぐ受診します。

 乳房の窪み、でっぱり、えくぼなどは皮膚の微細な変化のある部分を掴んで軽く変化させて見ると陥没が確認できる場合も

 あります。但し、乳房に触れたしこりが必ずしも乳癌であるとは限りません。ケースによっては、専門医の間でもその

 しこりが悪性(乳癌/非浸潤癌)なのか、良性(乳管内乳頭腫や乳腺症など)なのか意見が分かれる事もあります。

 病理診断の段階でさえも、このケースが紹介されているものもあります。病理医の経験が豊富なのか、症例を沢山扱

 っているのかなどでも判断に差が出る事も考えられます。ホントに微妙なケースも有るようです(細胞の形状が癌に

 類似しているが、怪しいなど)。疑わしい場合は、しっかり調べてもらう事は大切な事です。
リンパ節検査では腋の

 下のリンパ節が腫れていないか腋の下の奥を指先で確認します。立位でも仰臥でもできます。乳癌は概ね腋下リンパ節

 が最初に腫れる事が多いのでこの部位の確認を忘れないようにします。

-自己検診模式図-




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   §11 家族性乳癌/乳癌(乳ガン・乳がん)


    米国のデータでは乳癌・卵巣癌全体で遺伝に関係している割合は7〜10%で遺伝の関係した乳癌・卵巣癌のう

    ち、BRCA1が陽性のものが52%、BRCA2が陽性のものが32%、遺伝子が特定できないものが16%という報告

    が有りますが、遺伝子のある人全てが乳癌・卵巣癌を発症するわけではない。乳癌を発症する割合は50〜60

    歳くらいまでで約40%、75歳くらいまでで約80%と考えられております。(BRCA1.2は家族性乳癌原因遺伝

    子でこの遺伝子のある人は若い頃より乳癌を発症し易い、両側乳房に乳癌を発症し易い、卵巣癌リスクも高い事

    が分かっていますが予後良好ということも知られております。)







   §12 エストロゲンと乳癌(乳ガン・乳がん)


    乳癌は女性ホルモン(エストロゲン)の刺激で発育、増殖するホルモン依存性の癌で初潮が早い、月経周期が短

    い、閉経が遅いなどは長期間エストロゲンの刺激を受ける事になります。エストロゲンは排卵前後に多量に分泌

    されるので月経周期が短い場合もエストロゲンの刺激が頻繁になります。閉経前は脳下垂体からの.刺激ホル

    モンによる刺激で卵巣からエストロゲンが分泌されますが卵巣機能が途絶える閉経期以後は副腎由来ホルモンア

    ンドロゲンが脂肪組織などのアロマターゼによりエストロゲンに変換されるため皮下脂肪が多いと沢山のエスト

    ロゲンが生成される。(アンドロゲンからエストロゲンを合成する酵素がアロマターゼでアロマターゼ阻害薬は

    乳癌組織でのエストロゲン代謝を阻害して濃度を低下させる。閉経後の女性の主要なエストロゲン産生臓器は脂肪

    でありアロマターゼ阻害薬は閉経後乳癌に適用される。)日本人に乳癌が顕著に増加しているのは欧米人のように

    初潮が早くなることも要因の一つではないかと考えられております。






   §13 子宮体癌・卵巣癌/乳癌(乳ガン・乳がん)


    子宮頸癌はヒトパピローマウィルスのためにエストロゲンとの関係はありませんが子宮体癌・卵巣癌はエストロゲ

    ンとの因果が有りますので、体質的に乳癌にも罹り易いと思われます。 乳癌の検診は機会有るごとに受けるこ

    とが大切です。






   
§14 乳癌(乳ガン・乳がん)の生存率


病期 5年生存率 10年生存率(他の資料)
T期 95% 89%(90%未満)
U期 88% 76%(80%未満)
V期 ーーー(60%未満)
Va期 76%  65%(ーーーーー) 
Vb期 66%  47%(ーーーーー) 
W期 34% 20%(20%未満)





   
全国の癌治療の中心的な病院が加盟する「全国癌センター協議会」では、胃癌、肺癌、乳癌、大腸癌の治療5年後の

   生存率を発表しました。それによりますと乳癌は群馬県立癌センター(92、9%)、県立癌センター新潟病院(90、6%)、

   大阪府立成人病センター(89、8%)、北海道癌センター(89、3%)、千葉県癌センター(88.0%)、神奈川県立癌セン

   ター(85、9%)、四国癌センター(83、2%)、国立癌センター中央病院(*93、3%)となっております。

   (受療者のステージなどは分かりませんので、一概にこの数値の評価はできません。*は手術症例のみです。)





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   §15 乳癌(乳ガン・乳がん)の局所再発・遠隔転移


   局所再発とは乳房温存手術をした側の切除跡に癌が発生する事で、局所の場合は再手術、ケースによっては再

   度乳房温存手術が出来る場合もありますが、乳房切除術となる事が多くなり得ます。この際、放射線療法を行

   っていなければ放射線療法を受ける事ができます。局所再発の場合は転移の可能性も否定できないので全身療

   法も必要になってきます。転移が起こり易い部位はリンパ節、骨、皮膚で肺、肝臓、脳にも転移します。転移

   性乳癌の場合は全身療法となりますが、完治は期待できないため症状の進行を遅らせたり、緩和したりする事

   によりQOL向上を目的とした治療になります。薬物は副作用の少ない薬物から暫時切り替えてゆきます。「

   乳癌診療ガイドライン薬物療法」では閉経前の転移性乳癌でホルモン感受性が有れば一次治療はホルモン療法

   の選択を推奨し、閉経後の場合はアロマターゼ阻害剤を推奨しております。抗癌剤は一次化学療法としてアン

   スラサイクリン系orタキサン系を、二次化学療法としてはアンスラサイクリン系、タキサン系の中で使用され

   なかったどちらかの系列の薬剤を推奨しております。


   近年再発・転移性乳癌に対し従来にない分子標的治療薬も登場しておりますが、これは病気の原因になる分子

   だけに作用する薬剤です。癌細胞にあるHER2という増殖に必要な情報を外部から細胞内に取り込む働きをする

   受容体に作用する薬剤で、このトラスツズマブはHER2受容体と結合して情報を取り込めなくします。トラスツ

   ズマブが効くか否かはHER2受容体が過剰に発現しているかどうかで判断します。HER2受容体陽性の人はホルモ

   ン受容体陰性の人に多いのでホルモン受容体陰性であるのか否かは重要です。HER2受容体陽性の人は乳癌全体

   の15〜25%存在すると考えられております。ウィークリー・タキソールとの併用がより効果的と考えられ

   ており単独・併用療法どちらも推奨されております。トラスツズマブの副作用は発熱・悪寒が初回投与の40

   %、2回目以降は5%程度になります。心不全も起こる事があり、5%の人には軽い運動でも息が切れるなど

   の症状がでますので心臓に問題のある人、アンスラサイクリン(心臓に副作用)の併用は出来ません。



   
§15−1 転移・再発時の多剤併用療法など/乳癌(乳ガン・乳がん)

ホルモン陽性・閉経後
 アロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン)
 アロマターゼ阻害剤+トラスツズマブ
ホルモン陽性・閉経前
 卵巣の機能抑制(LH-RHアナログ、卵巣摘出など)+タモキシフェン
 卵巣の機能抑制+タモキシフェン+トラスツズマブ
ホルモン陰性
 シクロフォスファミドドキソルビシン(AC療法)
 シクロホスファミド+エピルビシン(EC療法)
 ドセタキセル+ドキソルビシン(AT療法)
 シクロホスファミド+ドキソルビシン+フルオロウラシル(CAF療法)
 シクロフォスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル(CMF療法)
 ドキソルビシン+パクリタキセル
 ドセタキセル+カペシタビン
 ゲムシタビン+パクリタキセル(GT療法)
 カペシタビン+ラパチニブ
 パクリタキセル+トラスツズマブ
 ドセタキセル+トラスツズマブ
 パクリタキセル+カルボプラチン+トラスツズマブ




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§15−2 転移再発時の治療/乳癌(乳ガン・乳がん) 


   
§15−2−1 ホルモン療法/転移・再発時の治療/乳癌(乳ガン・乳がん)


   
閉経後に乳癌を発症した場合、女性ホルモンに反応するために成長する事が多いと考えられております。この様な

   場合には、ホルモン療法が選択されます。アロマターゼ阻害剤が治療効果があるとされております。ですが、既に

   ホルモン療法を受けている患者さんでは、治療効果が低いとされ、抗癌剤治療の選択を検討します。閉経前に発症

   した場合には、女性ホルモンの活動を抑えるLH-RHアナログと女性ホルモンの効果を抑えるタモキシフェンなどの

   併用療法が選択されます。卵巣を摘出する事も検討されます。






   
§15−2−2 化学療法/転移・再発時の治療/乳癌(乳ガン・乳がん)


   
再発時に改めて検査するホルモンの感受性が低い場合には、抗癌剤治療を選択します。患者さんの体力、以前に使

   用した抗癌剤などから、抗癌剤が決定されます。又、上皮細胞成長因子(EGF)に反応して成長するような場合には

   ホルモン剤や抗癌剤に分子標的治療薬を加える事もします。トラスツズマブやラパチニブなどがHER2の作用を阻害

   します。






   
§15−2−3 手術療法/転移・再発時の治療/乳癌(乳ガン・乳がん)


   乳房や胸壁に再発した局所再発癌であったり、また、肺や脳に転移した癌が一つで、サイズが小さければ、手術適

   応の検討もします。術後は抗癌剤やホルモン剤による治療も行われます。手術適応のない状態でも、化学療法によ

   り癌が充分に縮小すれば、手術が選択される場合もあり、このケースでは完治する例もあるとされます。




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§15−2−4 緩和療法/転移・再発時の治療/乳癌(乳ガン・乳がん)


   
骨に転移する乳癌は痛みがとても強く、痛みを和らげることが、大切になります。通常骨の疼痛緩和には、放射線

   照射を行い、ビスホスホネート剤を投与します。ビスホスホネートは骨が癌の刺激によって溶けることを妨げる作

   用を持っているとされます。癌が肺に転移した場合には、咳を抑える薬や、酸素吸入なども行います。転移・再発

   した癌が、臓器などを圧迫するようであれば、症状緩和のために、その部位を切除する事もあります。







   §16 乳癌(乳ガン・乳がん)の検査の概要



   乳癌の疑いを持ちますとまず外科の出来れば乳腺外科、乳腺外来に受診しますが、問診(症状、月経の有無、

   最終月経、家族歴)、視診触診(乳房、腋の下、鎖骨上下リンパ節などを目視、指で触れてしこりや皮膚の変

   化、異常の有無の確認)の後、超音波検査マンモグラフィーによる検査が行われます。

マンモグラフィー・超音波検査で異常所見があれば

細胞診・針生検になります。この際、良性ならば経

過観察、悪性ならば即、乳癌として入院治療となり

、乳癌の疑いとなれば生検を行い診断を確定させま

す。この際に悪性の診断であれば乳癌として入院治

療、良性であれば経過観察となります。生検はしこ

りや石灰化の組織を取り出して癌細胞の有無を調べ

て確定するための検査で、外科的に組織を摘出する

摘出生検(外科生検)と、針を刺して組織の一部を

採取する針生検がありますが、近年は患者さんの負

担の少ない針生検が主流となっております。針生検

には穿刺吸引細胞診よりやや太目の針で組織を切り

取るコア針生検と、更にもう少し太目の針で組織を

切り取り吸引するマンモトーム生検(吸引式針生

検)が有りますがマンモトーム生検が主流です。

何れも局所麻酔をします。




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§16−1 マンモグラフィー/乳癌(乳ガン・乳がん)


   「検診マンモグラフィー読影認定医師」であれば検査技術、撮影技術にも長けており安心できる。マンモグラフィーは

   触れる事の出来ない非浸潤癌でも発見が可能(小さなしこりだけでなくしこりになっていない微細な石灰化も発見可能)

   です。マンモグラフィーは早期発見にかかせません。マンモグラフィーの一回の検査で被曝する放射線量は0.05〜0.15

   ミリシーベルトで自然界に存在し、日常生活で被曝する放射線量は年間2.4ミリシーベルトでありその量はわずかである

   といえます。乳癌の早期発見のメリットとの比較選択になります。年に一回の検査を行う医療機関が多い。乳がんの

   手術をした場合は特に乳癌の手術をしていない側の乳房の年一回のマンモグラフィーの検査をガイドラインでは強く

   勧められている。マンモグラフィーは視診、触診だけの場合より早い段階で乳癌を発見できるという臨床試験での

   結果が報告されております。但し乳房温存療法を実施した側の乳房のマンモグラフィーの有用性は証明されていない

   ようです。






   
§16−2 超音波検査/乳癌(乳ガン・乳がん)


   放射線の被曝の心配がなく繰り返し検査できます。妊娠していても安心して検査が受けられますし、乳房に傷や痛み

   がある人でも受けられます。乳腺の発達した若い人には適した検査です。超音波検査は石灰化を映す事は出来ません

   のでしこりにならない非浸潤性の乳癌は発見できませんが、指では触れられない数ミリの小さなしこりを発見する事

   ができます。又、超音波では乳腺は白く映り、しこりは黒く映ります。マンモグラフィーは両方とも白く映ります。

   年に一回の検査を行う医療機関が多い。






   
§16−3 マンモトーム生検/乳癌(乳ガン・乳がん)


   局所麻酔の後、4〜5o程度の切開傷で微細な石灰化の細胞を確実に採取するステレオガイド下マンモトーム

   生検があり、マンモグラフィーのように乳房を挟みx線撮影した画像を3次元処理し特定された石灰化の位置

   を画像を見ながら組織サンプリングできます。






   
§16−4 穿刺吸引細胞診/乳癌(乳ガン・乳がん)


   しこりに細い針を刺して細胞を吸引し、細胞中に癌細胞の有無を確認するための検査です。






   
§16−5 乳頭分泌物細胞診/乳癌(乳ガン・乳がん)


   分泌物を確認すればその分泌物そのものの細胞を顕微鏡で確認検査をします。






   
§16−6 乳管造影検査/乳癌(乳ガン・乳がん)


   乳頭から造影剤を入れて画像診断します。




   
§16−7 乳管内視鏡検査/乳癌(乳ガン・乳がん)

   乳管に細いファイバースコープを入れて観察する検査です。






   
§16−8 血液検査


   抗癌剤治療をしている時は骨髄機能低下を起こしていないかを確認するために白血球数、血小板数のチェック

   、薬の代謝を担う肝臓に影響が出ていないかを確認するために肝機能のチェックをします。




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§17 リンパ浮腫など/乳癌(乳ガン・乳がん)


   リンパ液の流れが滞り(主に腕の先から方の方への流れが悪くなる)腕にリンパ液が溜まってむくみます。リンパ節を

   郭清したために起きるもので、全ての人におきるものでは有りません。しかし、一度おきてしまうと治り難いので予防

   に心がける事が大切です。場合によっては手術を受けた側の上腕から方の動きが悪く固まってしまう人もおります。

   運動、リハビリは手術後早くから開始して2〜3ヶ月は続けます。リンパ浮腫の場合はリンパの流れをよくするため

   に肩を上げたり下げたりの繰り返し、胸と手を同時に広げたり閉じたりの繰り返し(深呼吸の要領)、ボールを掌で

   握り締める、緩める事の繰り返したり、マッサージ(リンパドレナージ)などを腕のだるさを感じたり、むくみを感じたり

   した時などその日のうちに解消する事を基本として努めます。お風呂上りなどは効果的です。寝る時はリンパ節を郭清

   した側を上にして横向きにしたり、仰向けで寝る時は手術した側の腕の下に座布団や枕などを入れて腕を高くするなど

   の工夫もします。手術した側の腕や手には感染を防ぐ力が弱くなっているので怪我をしないように留意します。怪我を

   した場合は直ちに消毒し滅菌ガーゼなどでガードします。傷が深ければ直ちに受診します。補助的な弾性着衣もあり

   ます。


   2008年4月から、この治療用弾性着衣の購入に、保険が適用される事になりました。比較的高額な弾性着衣ですが、

   弾性力が落ちるために、3ヶ月〜半年で買い換えなければなりません。このリンパ浮腫は慢性化すると、象の皮の様

   に変性してしまいます。リンパ浮腫は乳癌手術を受けた患者さんの54%に起き、そのうちの27%は重症であると報告

   されております。強い弾性力で出来た、ストッキングやスリーブ(袖)、グローブなどの弾性着衣は、(患部を圧迫した

   まま、腕や足を動かせば、皮下のリンパ管が圧縮と弛緩を繰り返し、組織の隙間に溜まったリンパ液を、より深い部分

   にある太いリンパ管に送り込み易くなるとされています。この治療用弾性着衣の他に、例えばリンパドレナージ(皮膚

   をなでるようにリンパ液を流す)も、病院側に予防教育の指導管理料が支払われる事になったが、この方法は美容や

   筋肉の疲れを取るマッサージ手法と異なり、医療的な知識と熟練した技術が必要で各病院での対応の可能性を懸念

   する声も出ています。






   
§18 石灰化/乳癌(乳ガン・乳がん)


   石灰化とは細胞の死骸や乳管からの分泌物の結晶をいい、多くは良性であるが2割程度が癌細胞の壊死したも

   のといわれます。乳癌の石灰化は針状になったり細かい枝分かれ状態、多形性という様々な形が特徴で、しこ

   りになっていない石灰化は即ち乳癌がまだ乳管内に留まっている非浸潤性の状態の可能性が高い。




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   §19 乳癌(乳ガン・乳がん)の発生リスク


ハイリスクグループ ローリスクグループ
年齢 高齢 若年
居住エリア 都市 農村
婚姻状況 未婚 既婚
初産年齢 高齢or30歳以上 若年・20歳以下
授乳経歴 なし 数年
初経年齢 早期、11歳以下 遅い
閉経年齢 遅い、55歳以上 早い、44歳以下
肥満度(閉経後) 肥満(BMI) 標準体重群(BMI)
良性の乳腺疾患既往 あり なし
乳汁中の異型細胞 あり 乳汁分泌なし
マンモグラフィーの結節性濃度 乳腺高濃度>75% 実質が脂肪
ホルモン補充療法 長期施療 なし
経口避妊薬 若年期長期使用 なし
放射線被曝 頻回or高線量 最小線量
アルコール 飲用 非飲用
家族性乳癌 あり なし
乳癌既往 あり なし
卵巣癌、内膜癌既往 あり なし



   
* 乳癌の予防知識;@厚生労働省研究班は週にビール大瓶7本に相当する量を超える酒を飲む女性が乳癌になる

   リスクは、全く飲まない女性の1、75倍と発表しました。それによりますと、毎日ビール大瓶1本を飲んだ場合の1週

   間のエタノール量(150g)を目安にし、日本酒なら7合、ワインなら14杯、ウィスキーならダブル7杯に相当するもの

   で、150g超飲む人にリスクが1、75倍出会ったというものです。 これは欧米で報告されていた飲酒と乳癌発症リス

   クとの関係を、日本人でも裏付けたとされています。A乳酸菌飲料や大豆製品を10代〜40代にかけて頻繁に摂取

   した女性は、乳癌発症のリスクが低かった と京都大学病院のグループが米乳癌シンポジウムで発表しました。それ

   によりますと、飲料を週4回以上摂取していた人は、週3回以下の人に比べ、乳癌の危険性が減少、豆腐、納豆、味

   噌などの大豆製品でも摂取量が多いほど危険性が低下する傾向が見られたというものです。(対象は40〜55歳の

   早期乳癌患者300人と同じ条件で乳癌ではない約660人で、小学校高学年から40代にかけての乳酸菌飲料など

   の摂取頻度の調査です。)





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